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ちょっとした話

キャンプや外泊時に注意したい感染症 その1

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近年、キャンプ人気やペットと宿泊できるホテルの増加などにともない、ふだん暮らす環境とは異なる場所へワンちゃんと出かける飼い主さんが増えました。旅先ではリラックス気分や解放感などがあってつい無防備になりがちですが、自然界には人や動物に問題を起こす様々な感染症のリスクがあります。

そのうち、今回は季節的にタイムリーなマダニが媒介する感染症について、マダニ対策に十点を置いて書いてみます。

マダニが媒介する感染症

マダニは色々な病原体を媒介します


前回のコラムでSFTSについて解説しましたが、マダニの問題は刺されることによる患部の炎症(痛み、腫れ)だけでなく、いくつかの病原体を媒介することのほうが重要だったりします。

媒介される感染症の中には致死性の高いものもあるので、マダニに咬まれる可能性がある場所へ行く時には人も動物も必ずマダニ対策を行いましょう。


人のマダニ対策


人のマダニ対策はとにかく刺されないようにすることに徹するしかありません。


服で対策!

人間が昆虫やマダニを避けるには畑作業や山やキャンプなどへ行く際には長袖・長ズボンを着用するのが最低限の対策です。服はマダニや他の虫などが付きにくいようにウインドブレーカーのようなシャカシャカした素材で、色は白など明るい色のほうがもしマダニが付いた時に見つけやすくなります。


身に残さない対策!

畑作業や山から帰ったら必ずシャワーを浴びます。今どきのキャンプ場はシャワー完備のところもあるので、テントで休む前に浴びられるとベストでしょう。

着ていた服は室内に一度も持ち込まないことが理想ですが、玄関に入る前に服を脱げるような環境はなかなかないので、上に羽織っていたものだけでも先に外でしっかりはたきましょう。中に着ていた服はシャワー前など脱いだ時にカゴなどに入れておき、その後カゴごと玄関の外に出してからしっかりとはたきます。洗濯後は乾燥機があればマダニは高温と乾燥に弱いのでぜひ利用してください。


犬猫のマダニ対策

薬で対策!

犬猫の場合には経口タイプか滴下タイプのノミ・マダニ予防(駆除)薬があるので、完全室内飼いを除いて必ず予防してあげましょう。短毛種で毎日シャンプーできるようならなんとかなるかもしれませんが犬にとってはストレスになるためオススメしません。

また、お薬とシャンプーのダブル効果を狙う方もいるかもしれませんが、使用するお薬のタイプによってはかえって効能が落ちるので注意が必要です。

予防薬は動物病院で処方してもらうタイプが効能・毒性の面から最も安全です。毒性というと怖いと感じてしまうかもしれませんが、毒性試験はお薬の安全性を確かめる検査です。飲み薬は体内に入るので毒性が低く、体内に入らないタイプのつけ薬は毒性が高い傾向にあります。

滴下タイプのメリット

  • 簡単につけられる。
  • 接触毒なのでノミやマダニに吸血される前に駆除できる。
  • 体内には薬剤が取り込まれないので内臓疾患があっても利用できる。

滴下タイプのデメリット

  • 大型犬の場合には数か所につけないと全身に薬剤がいきわたらない。
  • 小型犬でも顔回りや足先などには薬剤が届きづらい。
  • 接触毒なので全身をくまなく動くノミには効果があっても、マダニは吸血しだすと一か所に留まり、かつ顔や耳などにつくことが多いため効果が低いことがある。
  • 月に2回以上シャンプーする場合には能書より効果持続期間が短くなることがある。
  • 皮膚炎がある子には使いづらい。
  • アルコール負けする子には使えない。
  • 体内に入らないので毒性としては経口薬より少し高くなる。
  • 薬効が被毛に残留するので小さいお子さんへの毒性を気にする方がいる。
  • 歴史が古いので耐性ノミ・耐性ダニが報告されている。

注)滴下タイプのオールインワン予防薬として知られるレボリューション®は、経皮的に薬剤が吸収されて血液中に入ります。日本ではマダニに対する承認が取れていないためここでは取り上げていません。


経口タイプのメリット

  • 新しい薬剤なので耐性ノミ・耐性ダニが少ない(ないわけではない)。
  • 薬剤が体内に取り込まれるので体表のどこにマダニがついても大丈夫。

経口タイプのデメリット

  • 肝臓や腎臓の機能が衰えていると血中濃度が高くなる。
  • 嗜好性が合わないと食べてくれない。
  • 大豆、牛肉、鶏肉など各種主成分にアレルギーがある場合は利用できない。
  • 下痢をしていると血中濃度が不足する可能性がある。
  • 投与後に嘔吐した場合にどうしたらよいかわからない。
  • ノミやマダニに吸血されないと薬効がない。

ノミアレルギーなどのアレルギー性皮膚炎を抑える効果は滴下タイプと経口タイプの差はないとされており、マダニが媒介する病原体の防御効果も差異はないと言われています。

上記デメリットのうち投薬後の嘔吐ですが、メーカーにより吸収速度が異なるので使用している薬剤についてかかりつけ医に問い合わせることと、抵抗がなければ吐いた吐物をそのままもう一度食べてもらうことがベストです(^^;)

ただし毎回吐く場合はお薬が合わない可能性があるので、1回目は再トライしても2回目以降吐くようならお薬の変更を検討したほうが良いと思います。


マダニ媒介感染症について


日本国内でマダニが犬や猫および人に媒介する主な病原体は、以下のような感染症を引き起こします(人や犬で致死率が高いものを赤で示しました)。

マダニが媒介する感染症病原体
SFTS
(重症熱性血小板減少症候群)
ウイルス
犬バベシア症寄生虫
ライム病まれスピロヘータ(細菌)
日本紅斑熱リケッチア(細菌)
犬エールリヒア症リケッチア(細菌)
ダニ媒介性脳炎ウイルス
海外にはマダニが媒介する人とネズミのバベシア症もあります…。

紫の球体は赤血球です。赤血球の中に白く抜けているのがバベシア原虫です。
増殖にともないワンちゃんの赤血球を壊していきます。

犬や猫では問題なくても人が感染すると症状がでるもの、動物種によって致死率が異なるものなどさまざまです。同じ日本国内でも西日本に多いもの(バベシア・日本紅斑熱)、東日本に多いもの(ライム病)など差があります。

海外ではもっと多くのマダニ媒介人獣共通感染症があり、今後国内に入ってくる可能性も否定はできません。また、疫学調査がすすめばすすむほど新たな感染症が明らかになる可能性もあります。

マダニが媒介する病原体は、マダニが口器を動物の体に刺し、吸血準備のための唾液物質を出すときに一緒に動物の体内に注入されます。

全て解明されているわけではありませんが、病原体は唾液物質を注入してすぐに動物の体内に入るのではなく、バベシアやライム病では吸血後48時間以降、SFTSも24時間ほどしてから体内に入るとされています。

したがってそれより前に駆除できる薬剤なら滴下タイプでも経口タイプでも感染症予防の観点からは問題ありません。

マダニに対しては滴下タイプの古い薬効成分の製品は48時間以内に駆除と記載されているものもあります。これだとバベシアなどは予防できてもSFTS予防には少し長すぎる可能性があります。

経口タイプは12時間~24時間以内に100%駆除効果があるものが多いため、SFTSに対しては滴下タイプより優位と思われますが、マダニはすぐに吸血するわけではなくしばらく体表をうろつくので、接触毒である滴下タイプにもそれなりに有利な点があります。

各メーカーで表記されている効果発現時間が、吸血されてからの時間なのか体表についてからの時間なのかまちまちですが、いずれのタイプも投与してから一定の時間たたないと効果はあらわれません。

ノミに対してはノミアレルギー性皮膚炎予防のために短時間で効果が出始める製品が多いですが、マダニに対しては24~48時間くらいかかります。また、そもそも投与してから効果を発揮する(全身にいきわたる、血中濃度が達する)までにも時間がかかりますので、キャンプなどへ行く2日以上前に必ず投与しましょう。


なぜマダニには効きが遅いの?

意外と知られていないことですが、前述したようにマダニは体についてもすぐに吸血しません。なので予防薬を使っているのに体表や被毛中にマダニを見た!といって連絡をいただくことがあります。マダニは前述したように数時間~1日以上かけて体の吸血しやすい柔らかい皮膚の部分を探して体表を移動します。

したがって体表にマダニを見つけてもお薬が効いていないわけではありません。でももしまだ吸い付いていないマダニを目視で見つけたら放置せず、セロハンテープなどでくっつけてそっと取り去ってあげましょう。

おすすめの捕獲方法は後述します。


マダニには滴下タイプが良い?

体表を数時間ウロウロするマダニに対しては、接触毒の滴下タイプのほうが少し有利かも?と思うことがあります。でも滴下タイプは体表すべてには行き渡りづらいので、顔回りなどで結果的に吸われてしまうことがあります。結果的に顔などの周辺で吸血を許してしまったら、そもそも薬剤が行き届いていない部位なので、マダニを駆除できず病原体も媒介されてしまいます。

マダニを殺滅することを目的とするのではなく、病原体を媒介されないようにするために予防していると認識してもらえば、滴下タイプでも経口タイプでも媒介される時間内に駆除できれば問題ないのですが、大型犬などは経口タイプのほうが良いように思います。


もしマダニに刺されたら…


万が一病原体を保有していたマダニだったとしても、刺されてしまった後に病原体を体内から排泄する方法がないため、症状が出たら対症療法をとるしかありません(これは動物も同じです)。したがって無症状なら経過観察するしかないのが現状ですが、かかりつけ医に相談しておくのは良いと思います。

とはいえ人も犬も、もしマダニがついていたらまずは適切に除去しましょう。人はそのうえで念のため刺された日を記録したうえで、刺された部位が炎症を起こしていたら病院へ。皮膚に異常がなければ経過観察をします。

ではどうやってマダニを取るか?

ワンちゃんの飼い主さんの中にも、春や夏になるとマダニがついたので取ってほしいといって来院されるかたがいらっしゃいます。

マダニの口にはトゲトゲがあり簡単には皮膚から抜けないようになっているので、無理矢理とろうとするとマダニの口だけが皮膚の中に残ってしまい炎症をおこすことがあり、それを知って動物病院へいらっしゃいます。

でも旅先ですぐに病院に行けなかったり、付いたままにするのは気が気ではないですよね。そんな時に役に立つのが↓のグッズで当院でも使用しています。これさえあれば獣医いらず。もちろん人にも使えます。



とても簡単にマダニが取れます。ちょっと楽しいくらいです(^^;)
とったあとのマダニは必ず捕獲し、適切に処理しましょう。

若ダニ、成ダニはこのグッズで簡単に撮ることができます。ミリ単位の小さな幼ダニは難しいです。

捕獲したマダニは生きているのでガムテープなどに張り付けてからゴミ箱に入れるか、ティッシュなどでくるむ場合は逃げ出さないよう厳重に巻いて、さらにビニル袋などで密閉してからゴミ箱に入れてください。

キャンプ場ならバーベキューコンロなどで燃すのもアリかも…。

残酷ですかね…。人間って勝手ですね(T T)

ノミは一昔前は爪で潰す飼い主さんがいましたが、ノミやマダニはお腹に卵を抱えている個体もいるのでつ、ぶすと周囲に卵がまき散らされてしまいますから絶対につぶさないようにしてください。

ガムテープやセロハンテープがあればトリモチのように使えるので便利です。ノミは食器用洗剤を溶いた水につけると死滅しますので、ノミ取り櫛などで救い上げたらすぐに洗剤水に漬ける方法でも良いです。

また、予防薬を使っていてもダニがついたばかりだとまだ生きているので、犬がブルブルっと体を振ったら吸血前のマダニは下に落ちます。床に落ちてしまったマダニには思ったより速い速度で移動します。そして人を刺したり次の動物を刺したりするので必ず捕獲して退治するようにしましょう。

モノカ記事下ダブルレクタングル

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