マイクロチップの普及
最近は、ワンちゃん猫ちゃんにマイクロチップを挿入している飼い主さんも多いと思います。
ペットショップでは販売(この言い方は本当に嫌ですが!)前に既に挿入されていることが多いようですが、犬や猫が保護された時に保護施設さんで挿入したり、マイクロチップを未挿入の子犬や子猫の場合は、家族に迎えてから不妊手術の時などに挿入したりすることもできます。
7年前の東日本大震災以降は、家族として何年も一緒に暮らして成犬、成猫になった子たちに、万が一のためにということで今から挿入してほしいというご依頼もありました。
壊れてしまったマイクロチップ
ところがとある猫ちゃんで、せっかく挿入したマイクロチップが半年足らずで読み取れなくなった事例がありました。
当時、そのマイクロチップを取り扱っていたメーカーに問い合わせたところ、マイクロチップも精密機械なので携帯電話のように当たり外れがあり不良品もある、消耗品として壊れるものだという認識をしてほしいと言われました。
通常の寿命は10年。したがって半年で壊れたマイクロチップは不良品ということになります。ハズレくじを引いたと思って諦めるしかないなんて・・・。
読み取れなくなったら
消耗品であるマイクロチップの寿命が来たらどうするのかというと、子犬・子猫の時に挿入して10年で約10歳ですから、動物たちの寿命はまだまだ先で元気なので、必要があれば別の部位に追加で挿入するように言われました。
古いほうのマイクロチップは、皮下組織にあっても組織反応を起こしたりしないので、挿入したままで問題ないということのようで、説明にいらっしゃったメーカーの方も、「うちの犬は2個入ってます。」と笑顔でお話していました。
そうはいっても、一般的な寿命と考えられている期間使用したあとならまあ納得もいきますが、半年で壊れてしまったいわゆる「不良品」を皮下に残しておくことはなんとなく気持ち悪いですよね・・・。
当時の飼い主さんも、当然ながら残すことに不安を感じられたため取り出すことをご希望になりました。
マイクロチップは直径2mm、長さ8~12mmで、注射器のようなカートリッジに入っており挿入時は無麻酔で可能ですが、取り出すときはそうはいかず、最低でも鎮静をかけて皮膚に小さな切開を施して取り出さなくてはなりません(局所麻酔でやっておられる獣医師もいるかもしれません)。
その飼い主さんは、当初は海外へお引越し予定だったのでマイクロチップを入れたのですが、もし、空港の検疫時まで壊れていることがわからなかったら、猫ちゃんだけ空港で数週間足止め・・・などという事態になっていたかもしれませんでした。
結局、海外へは行かずに済んだので、新たなマイクロチップを挿入しなおすことは見送られました。
定期的に読み取り確認を
マイクロチップは壊れます。これは確かに仕方のないことかもしれません。ただ、いざというときに読み取れなくてはせっかく挿入していたのに我が子が帰ってこれなかったという事態になってしまいます。
飼い主さんは定期的に読み取り確認をするようにしましょう。
マイクロチップの読み取りは、読み取るためのリーダーを持っている施設であればどこでも可能です。逆に言うなら、保護された施設(警察、愛護センター、ボランティア団体)がリーダーを持っていなければ個体識別はできません。
当院では事前にマイクロチップ挿入の有無をご報告くださっている方には、ご来院時や9月~2月のドッグドックやキャットドックの時などに読み取り確認をするようにしています。
万が一、読み取れなかった場合にはその旨お伝えするようにしています。
マイクロチップは皮下組織内を移動してしまうこともあるので、必ずしもずっと同じ部位にとどまっているわけではなく、読み取りも全身をスキャンする必要があります。各施設で丁寧に読み取り確認してくれるのかどうかはわかりませんが、これまでご自身で確認されたことがない場合は、ぜひご来院時にお声がけください。
最後に・・・
環境省のサイトには「外部からの衝撃による破損事故の報告はない。」と記載されており、つまり、割れたなど物理的に壊れた事例はないものと思われます。
とあるサイトには「現在に至るまで故障等は報告されていない。また、外部からの衝撃による破損事故の報告もない。」と遅れた情報が記載されていましたので、インターネットの情報はやはりメーカーや公的機関のものを優先的にみるようにしましょう。
寿命(耐用年数)については当院で故障の事例があったのは2011年のことで、当時のメーカーさんからは10年くらいと聞きましたが、2019年現在、環境省のサイトには耐用年数約30年くらいと記載されていました。