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ちょっとした話

GSEの活用

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シトラファイン®とMISTECT(ミステクト)


2019年6月、まさかSARS-CoV-2なんてウイルスに世界がこんなに混乱させられるなんて想像もできなかった頃、雑誌ねこのきもちで「猫にまつわる3つの菌のはなし」という特集記事の監修をさせていただいたことがありました。


2019年6月の特集記事です
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この特集記事の中で人や動物にも安心な天然成分の殺菌・消毒スプレーとして、ココチプラス株式会社さんのシトラファイン®という商品を紹介させていただいおり、当院でも受付の手指消毒などに利用しています。


グレープフルーツ種子から抽出された抗菌成分GSE


シトラファイン®はGSEという成分と水だけの抗菌スプレーです。GSEとはグレープフルーツの種子から抽出された天然成分で抗菌作用があることが知られています。

天然成分とか自然の植物から抽出する…と聞くとたいした効果がないように思うかもしれませんが、植物や微生物が自分自身を守るために殺菌成分を分泌・生成していることはずっと昔から知られています。

身近な植物由来の生理活性物質

身近なところで言えばブドウやブロッコリー、キュウリなどの表面に付着している白っぽい膜のようなもの。カビや農薬と勘違いする人もいますが果物や植物の外層にあるクチクラ層から生成されている「ブルーム」というワックス成分です。

このブルームはオレアノール酸が主成分で、果実や植物表面の水をはじくことで病気になりにくくしたり、果実の中の水分が蒸発するのを防いで鮮度を保ったりします。さらにオレアノール酸はトリテルペンと呼ばれる物質の1つで、抗菌作用やさまざまな生理活性があることが報告されているそうです。

植物における「三大機能性トリテルペン」とも呼ばれるオレアノール酸、ウルソール酸、ベツ リン酸は、抗ガン作用、抗炎作用、抗酸化作用、抗高脂血症効果などの生理活性を有し、特許文献としては、これらの関連化合物としてエイジング対応用の皮膚 外用剤、ヒアルロニダーゼ阻害、メタボリックシンドロームを予防および改善する作用を持つ組成物、抗掻痒剤等が報告されています。このように「三大機能性トリテルペン」の重要性が脚光を浴びる一方、このような化合物は、植物でしか生産されず、天然物(植物の根や果皮)から抽出して利用されています。

東京工業大学 | 最近の研究成果 | 研究成果詳細 (titech.ac.jp)

このほか下記のように、既に我々の生活に取り入れられているものもたくさんあります。

防虫菊(シロバナムシヨケギク)殺虫性分蚊取り線香
セージなどのハーブ防腐作用肉料理など
唐辛子防虫・防腐作用米びつなどの虫よけ
ヒノキ(ヒノキチオール)抗菌作用犬用シャンプーなど

微生物由来の生理活性物質

植物だけでなく微生物も我々の生活にとても重要な役割をはたすことがあります。日本では酒、味噌、醤油、納豆、ぬか漬け…などあげればきりがありませんが、たくさんの発酵食品文化があり日本人の腸内細菌の健康に役立ってきています。

医療の分野としてはその昔、カビや放線菌などの微生物が自分以外の微生物の発育を抑えたり、細胞の発育を阻害したりする物質を生成していることがわかり、これが抗生物質として多くの人や動物の命を感染症から守ってきました。

ただしこれらの物質の中には人や動物には有害で「毒素」と呼ばれるものもあります。

微生物を含め何かを殺す物質は他の生体にとって有効でも有害でもあります。やっかいな病原微生物を殺してくれるのは良いけど人の細胞に与える害のほうが強ければそれは「毒素」になり、害はそこそこ目をつぶれる程度で病原体が先に減ってくれれば「抗生物質」として活用できるというわけで、「抗生物質は無害ではない」と言われる理由です。


GSEは植物由来の生理活性物質


GSEは前述のような生理活性物質のうち、植物のみが生成する天然抗菌成分で食品添加物として既存していたものです。主成分は脂肪酸とフラボノイド。ココチプラスさんはGSE研究者とともに製品を開発してきたこだわりがあり、他社や海外のGSE製品と違ってシトラファイン®は不純物を含まずGSEと精製水のみで作られていることも特徴のひとつです。



刺激がなく無味無臭、人や動物に安心の成分であり、特にさまざまな化学物質に弱い猫科の動物にも安心して利用できる(もちろんワンちゃんにも!)ということで2019年にご紹介しました。

手荒れが不安な方にも好評で、当院でお試し用の携帯スプレーを販売した際にはたくさんの飼い主さんが気に入ってくださって、大容量タイプをココチさんのt通販サイト(あまね商店またはAmazon)から継続購入されているかたも多くいらっしゃるようです(リンク先にあるシトラファイン®とばいきんバスター®はいずれもココチプラスさんの同じGSE製品です)。

なお、柑橘類の皮には猫に有毒とされているリモネンが含まれていますが、GSEはグレープフルーツとはいえ種子からの抽出物なので安全です。

かなり古い研究ではGSEの抗菌作用を否定したり、GSEに有害物質が含まれているとするものも散見されますが、研究が進みこれらは誤りとして訂正されているようです。GSEについての詳しい説明やシトラファイン®の特徴については、ココチさんのGSEブランドサイトに詳しく記載されているのでぜひご覧になってみてください(社長さんのブログも面白いです)。


MISTECT(ミステクト)登場!


私たちが普段の生活でテーブルや床、壁などを拭くのはもちろん、2019年の特集では犬猫の手足や顔まわり、お尻などが汚れてしまった時などにシトラファイン®をタオルやティッシュにしみこませて利用する方法をご紹介しました。

脱臭効果もあるのでトイレまわりのお掃除にスプレーして使用できるほか、実は飲んでも安心なのでオモチャを拭いたり、歯磨きなどにも利用できます。

猫は毛づくろいする動物なので被毛に残留する可能性のある製剤やシャンプー剤などが限られていますが、シトラファイン®は精製水とグレープフルーツ種子からの抽出物のみで作られているので舐めても全く問題ありません。

当院では院内感染を目的として手指の手洗い、診察台の清拭、器具や衣類の消毒および滅菌などにはそれぞれ専用の消毒剤や滅菌方法を実施していますが、ご来院いただく飼い主さんや我々スタッフが触れたり空気を吸引する可能性のある空間、ワンちゃんや時には猫ちゃんが舐めてしまう可能性のある場所などに、舐めても触れても安全なシトラファイン®を使用してきました。

そんな中、シトラファイン®を霧状の微細粒子にして噴霧できるMISTECT(ミステクト)という機械ができました!とココチプラスの社長さんからご連絡をいただきました。

壁や床などあらゆる場所をコーティング

医療関係の施設に限らず飲食店や美容院、ジムなど、多くの人が出入りする場所では日々清掃を徹底する必要があります。清拭する箇所としてはテーブルや椅子、扉、ドアノブ、床…などなど、病院なら診察台や処置台、検査機器などもこまめに拭き掃除を徹底します。もちろん手指は一作業一手洗いが徹底されています。

診察台や器具などは使用したらすぐに消毒や滅菌をしますが、床や壁などはすべての箇所を毎回清拭できるわけではありません。

特に壁は休憩時間ごとや1日の終わりなどにまとめて掃除をすることが多く、手の届かない隙間や機材の裏側なども頻繁に清掃しづらいため完璧にできなこともあります。

人が触れられない場所でも汚れがたまることでカビなどが繁殖しやすくなり衛生環境が悪くなってしまう可能性があるため、普段届かないところは定期的に物をどかして大掃除しますが、できれば頻繁に対策しておきたいところ。


こちらがMISTECT本体

そこで登場したのがMISRECTという機械です。MISTECTはインターピア株式会社さんが制作したシトラファイン®専用の噴霧器です。

これは床、壁などあらゆる部位にシトラファイン®をコーティングする機械で、我々人間が拭き損ねたところなどをカバーしてくれる力強い味方です。

しかも液体を眼に見えないほど微細な霧状にするノズル部分には、以下のような結構すごい技術が使われていてびっくり。

MISTECTサービスで使用する噴霧機はJAXAのロケット技術に使われた実績のある高度な機材を搭載しております。
ノズルから噴出された薬剤は強い拡散力を持っている為、部屋の隅々まで行き渡ります。

MISTECT(店舗・施設向け除菌ソリューション) (interpia.ne.jp)

リトマス試験紙を用いて実験

このMISTECTを使ってどれくらいシトラファイン®がいきわたるのか、インターピアの担当さんが実験をしてみたそうです。

どんな実験かというと、一般的な間取りの住居で部屋ののいたるところにリトマス試験紙を貼り、MISTECTに弱アルカリ性溶液をセットして真ん中の部屋に置き一定時間噴霧したところ、各々の部屋のリトマス試験紙がアルカリ色に色変したそうで、MISTECTを置いた部屋から別の部屋へも微細粒子がいきわたっていることが証明されました。


スイッチを入れて噴霧が始まっています

近づいてよ~く見ると霧状のものが見えます

当院くらいの広さの店舗なら全てのドアを開放して真ん中の部屋で10分タイマーでかければ全体に行きわたるくらいの性能のようです。

近寄らないとわからないくらい微細な霧なので、これで何かが水浸しになるということはありません。もちろんパソコン、血液検査機器、レントゲン機器など精密機械もいくつかありますが全く影響ありません。


タイマー部分のイラストが何気にシトラファイン®仕様

これを午前の診療が終わった後や1日の診療が終わった後の通常清掃したあとの仕上げとして実施します。月に1回くらいでも良いらしいけれど、蓄積すればするほどコーティング力が強くなるとのこと。

だったらシトラファイン®には消毒剤のような毒性はないので毎日やってしまおうということに。しかもスプレーして拭くより微量で済むのでセットしてシトラファイン®もかなり長持ちするようです。


私たちの日々の清掃作業の一助として


ところで私はシトラファイン®について全ての微生物に効果があるとは思っていません。

植物が自衛のために生成する物質ですので、例えばカビや細菌への効果は期待できるかなと思っています。

植物に感染するウイルスもいますので、ひょっとしたらウイルスの一部にも効くかもしれないなぁくらいな感じで利用しています(が、かなり気に入っています)。

ものすごい威力のある殺菌成分は前述したように害になる可能性もあるので、感染対策をこういったものに頼る場合は人の免疫力をちょっと補助してもらえるくらいの効果で良いのです。

人の医療機関や公共機関はもちろんのこと、動物病院も院内感染を防ぐために衛生管理にはとてもシビアになります。

病院などでは院内感染を防ぐために適宜消毒作業をするわけですが、消毒作業を生体に利用するのか環境に使用するのか、いつ利用するのかなどによって、使用する消毒薬や消毒方法などをシチュエーションごとに選択する必要があります。

ちなみに手指の消毒については手洗いが最強です。タダの水でも良いのです。

前述したようにもともと医療従事者は一作業一手洗いが徹底されているはずです。アルコールや手指用消毒剤は、手洗いができない環境においての苦肉の策です。

手袋に至っては自分が汚物に触れないためのもので、何かに触れたら本来は交換する消耗品です。

はめたまま作業を続けるのは感染伝播予防の意味ではもっともタチが悪い行為になってしまいます。なぜなら素手だと汚れたら手洗いするのに、手袋だとなぜか気にならなくなり洗う人が少ないからです。

繰り返しますが、手が洗えるならそれが一番で、そこには石鹸やハンドソープはなくても構わないと言われています。そして手袋は汚れたら交換するのが本来の使い方です。

しかしながら手洗いができない場面も多々あります。

そのような場合に仕方なく消毒薬を使う際には、刺激の強い消毒薬では手荒れを起こしたり皮膚に棲む常在菌まで殺してしまい、皮膚のバリア機能を壊してかえって病原菌感染を招いてしまいかねません。

コロナ禍ではアルコール消毒ばかりすることで、アルコールでは殺せない種類の病原性微生物(細菌、真菌、ウイルスいずれも)による感染症も問題になっています。

そんな中、シトラファイン®のような刺激性のない製剤は、手洗いと同じように手荒れの心配が少ないため皮膚バリア機能を温存しやすくなります。

もちろんある種の菌や真菌についてはココチさんが実験をして効果を確認してくれていることも信頼できる理由です。

空間消毒(いわゆる空気の消毒)という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、無菌室であってもひとたび誰かが中に入ればその部屋の空気は無菌ではなくなり、しかも呼吸すれば必ず吸引する気体に対し、常に微生物を殺滅できるほどの消毒薬を含ませることなど不可能です。

MISTECTは噴霧器ですが空間消毒ではなく、人の手が届くところも届かないところもコーティングしてくれる機械で、隅々まで拭き掃除をすることと同じような目的で、我々の清掃の心強い味方になってくれます。

コロナウイルスは飛沫感染やエアロゾル感染(この定義については議論ありそうですが)が主体で、接触感染がメインではないので触れるものを必死に清掃するのはあまり意味がありませんが、医療機関や動物病院ではコロナに限らずさまざまな病原体による感染症予防のために、清拭や消毒、手洗いなどは昔から行われていることです。

本来は何か特定の菌やウイルスをターゲットにすると、効果のある消毒薬の濃度、利用方法などもそれぞれに対して異なるため、全ての微生物を一気に殺滅しようとするのは困難を極めます。

例えば高温にすれば殺せるとしても溶けてしまう素材や生体には利用できませんし、細胞毒性が強い製剤も生体にはもちろん、揮発性などがあると吸引してしまうので生き物がいる環境には利用できません。

プラスチックや金属など消毒したいものの素材によっても利用できる消毒薬は限られています。

消毒薬を選択するとき、床や壁など環境中への使用は刺激臭があったり揮発により呼吸器などに有害なものよりも、無臭で飲んでもOKなもののほうが良いに決まっています。

そういった考えで、当院ではシトラファイン®をとっても気に入っており、MISTECTも心強い味方として導入しました。

  • GSEについて次は人や犬猫など哺乳類以外の飼育動物への試みについて紹介する予定です。

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